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4.気にしてらしたんですかっ!?

ผู้เขียน: 鷹槻れん
last update ปรับปรุงล่าสุด: 2025-06-04 12:52:30

うなぎはとっても美味しかったです。

でも最後のキスはいただけなかったです。

「何もそんなに落ち込むことはないだろう」

あのキスの一件以来、無言で黙々と残りのうな重を平らげて、ついでにお吸い物もしっかりお腹におさめた私だったけれど……。

あまりのショックに御神本(みきもと)さんとなんて、とうぶん口きいてやるもんか!と心に誓ったの。

「花々里(かがり)はうなぎ、好物なんだろ? だったらキスがその味でも問題なくないか? ……逆に何でダメなんだ」

そんなことを言ってくる時点で女心が理解できていないと思うの。

いつも女性にちやほやされて、相手を気遣う心を学び損ねてしまったんじゃないの?

ちやほやされてる、とかは私の勝手な想像だけどね、考えたら何だかイラッとするわ。

あれもこれもモヤモヤの種に思えてダンマリを決め込んだ私だったけれど……。

ただ、一度だけ。

「お詫びに俺のうなぎも食うか?」って彼のお重を差し出された時だけは無言でうなずいて受け取ったの。

わ、わかってる。

そんなことで懐柔されるとか、乙女としてよくないってことぐらい。

でも……でも……。

まだ食べたかったんだもん!

「近いうちに櫃まぶしや肝吸いも食わせてやるから。――機嫌直せよ、花々里」

案外女性にへそを曲げられた経験がないのかもしれないわね。

うなぎは受け取っておきながら、食べ終わるや否やムスッとして黙り込んだ私のことを、御神本さんが存外気にかけてくれるのが何となく心地いい。

優越感、とでも言うのかしら。

ほら、だって私。ここまで散々この人に振り回されてきたし。少しぐらい仕返ししたってバチは当たらないでしょう?

***

レクサスLSの助手席ドアを開けてもらって、無言で乗り込んで。

来た時と違ったのは、彼の手を煩わせることなく自分でちゃんとシートベルトをかけられたこと。

車に乗る機会自体あまりないからよくわからないのだけど、助手席に乗り込む際、男性が扉を開けてくれるのは一般的?

何だかお姫様扱いされてるみたいで落ち着かないとか思ってしまうのは、私が世間知らずだから?

何にしてもこのままアパートに戻るまで私、御神本さんとお話してあげないの。

キスで有耶無耶になってしまった婚姻届の件もあるから、彼とこのまま手が切れるのはまずいとは思う。けれど……お母さんと知り合いならきっと、お母さん伝で何とか連絡は取れると思うし。

今すぐどうこうこちらが動かなくても大丈夫……だと、思う……。

あんなに散々私のことを振り回しておいて、そう言えば彼自身、私の連絡先とか聞いてこようとしないし。

あ、もしかして貧乏だから持ってないと思われているのかも?

だとしたら少し心外だ。

確かに通信費は痛いけれど……携帯がないといざって時にお母さんと連絡取れないもん。

自宅には固定電話なんて引っ張っていないし、携帯がなくなったら色々困るから。

もちろんスマホみたいな通信費が高くつきそうなのは無理だから通話だけを重視して、いわゆるガラケーというやつを愛用しているけれど。

これだって結構な文字数のショートメッセージぐらいなら出来るから案外不便はないの。

そんなことを考えながら窓外を流れていく街並み――もうすっかり暗くなってしまった――をぼんやり眺めていたら、不意に声をかけられた。

「――少し寄り道しても構わないか?」

私、正直な話、めちゃくちゃ方向音痴なの。

今どこを走ってるのかなんて、暗さも手伝って皆目検討がつかない。

おそらく何も言われずに寄り道されても、停車するまではさっぱり分からないし、気付けなかったと思う。

でも、無断でどこかに立ち寄られたって分かった時には絶対何事?って思うだろうし、いい気持ちはしなかったはず。

あのキスからこっち、ずっと私がムスッとしてるのを知ってて。でも、言うべきことはちゃんと言ってくるところ、偉いなって。……そう、ほんのちょっぴりだけど、御神本さんのこと、見直したの。

それで、声こそ出さなかったけれど、小さくうなずくだけはしてあげました。

***

御神本さんが立ち寄ったのは意外にもコンビニで、こんな世間離れした印象の人でもコンビニとか行くんだって妙な感心をしてしまう。

でもきっと、こう言うところでの買い物自体慣れてないんだろうな。

店内をうろつく御神本さんを、ロックで守られた車内から見るとはなしに眺めながら、思わず唇の端が緩んでしまう。

何を探しているのか知らないけれど、迷いすぎじゃない?

大体コンビニなんて、「こういうのはココ」とか、どこの系列店に行ってもそれなりの不文律みたいなの、あると思うんだけど。

 御神本さんは身長も私より20cmぐらいは高かったし――恐らく170cm後半ぐらい?――、身に纏ったオーラがどことなく気高くて、コンビニなんてチープな場所にいたら余計に目立ってしまうの。

 しゃがみ込みでもしない限り棚の陰に頭が入ることもないし、何ならずっと首から上が見えている。

 私は155cmだから頭の先っちょが棚から覗くか覗かないか、なんだけど……こうしてみると背が高い人っていうのも常にどこにいるか監視されて可哀想ね。

 って、私が追跡するのをやめればいいだけなんだけど。

 だってだって! 何となく気になってしまうんだもんっ。

 御神本さんクラスの人が、コンビニで何を買うんだろう?って。

「あ……」

 結局自力で探すことを早々に諦めてしまったみたい。

 店員さんに何か話して、割とレジに近い棚の一角に連れて行かれてる。

 あの棚は――。

***

「待たせたね」

 ややして集中ドアロックが解除されたと同時に運転席側のドアが開いて、御神本さんが車内に乗り込んできた。

 彼が乗ったと同時に、行きがけにも感じた爽やかな香りが鼻腔をくすぐって。

 何だろ、この匂い。

 香水?

 男性でも香水とかつけるものなの?

 そんなことをふと考えながら、無意識にじっと御神本さんを見つめてしまって。「何だ、花々里。もしかして寂しかったのか?」とか聞かれてしまった。

 さ、寂しっ!?……いわけないじゃないですかっ!

 どうやったらそんなおめでたい思考回路になれるんでしょうね?

 思いながらフィッとそっぽを向いたら、「まだ口をきかないつもりか? なぁ、コレやるから機嫌直せよ」とか。

 コレ。

 分かってます。

 〝飴玉〟ですよね!? さっき店員さんに飴のコーナーに連れて行ってもらってるの、私、一部始終見てました。

 わざわざ寄り道してまで買ってくれるとか。

 この人、私のことをどれだけお子ちゃまだと思ってるんでしょうね?

「で、花々里は右と左、どっちがいい?」

 2種類も買ったんですか。お金持ちは違いますねっ。

 彼が片手ずつにささげ持った、ピンク系統と黄色系統のパッケージを横目に見てそう思う。

 思いながら、ムスッとした声音で「左……っ」と――。「ピンク色の方がいいのだ」と答えてしまう私って一体。

***

「はい、どうぞ」

 ガサガサとパッケージを開ける乾いた音を聞きながら、何となくそっちを見るのがはばかられてうつむいていたら、再度促すように「どうぞ」と声をかけられた。

 その声に顔を上げたら……。

「な、んっ……!?」

 で口移しっ!?

 御神本さんが唇で軽く挟んだ飴玉を、キスの要領で私の唇に押し当ててきた。

 私が顔を背けられないようにしっかりと両手で頬を挟み込んでるの、用意周到すぎてっ。

 そんなこんなに思わず抗議の声をあげようと口を開いたら、チャンスとばかりに桃味の飴玉が口の中に押し込まれた。

 そうしてそのまま飴を押し進めつつ彼の舌も一緒に侵入してきて……。

 私の舌の上で飴玉を転がすように蠢くのっ!

「あ、っはぁ、……んっ」

 執拗に擦り合わされるベロの動きに、口の端からトロリと甘い桃の香りの唾液が伝い落ちる。

 やだ、ベトベトになっちゃうっ。

 とか咄嗟に思いながら御神本さんの両腕をギュッと掴んだ。

 と、ようやくそれで唇が解放されて。

 っていうかここ、コンビニの駐車場!

 店内からの明かりでめちゃくちゃ車内も明るいのにっ。

 何考えてるの、この人!

 そう思って口をパクパクさせながら固まっていたら。

「花々里は桃かレモンの香りのキスがご所望だったよね? これでさっきのうなぎが上書きできて、機嫌も直してくれるだろう?」

 とか。

 嘘っ。

 私が言ったこと、そんなに気にしてらしたんですかっ!?

 っていうかその解釈の仕方、すごくズレてると思うの!

 私、うなぎ味のキスを桃味の飴玉で甘く上書きして欲しいだなんて、一言も言ってないっ!

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